MVで見るicon girl pistols10年史 No.3「素敵な偽物」

3.素敵な偽物 - This Wonderful Fake -

1stアルバム「New Currency」期を終え、毎月1~2曲をフリーダウンロード発表するという中々エグいタスクだった2010年を過ぎ、2011年の1月に、ギタリストのタカシがバンドを脱退する。なんで脱退したんだっけな?それでなんで戻ったんだっけ?バンド史において結構大事なポイントな気がするが…失念。

とにかく3人組となった2011年の我々は、どの様に物事を進めて行くべきかをはっきりと見出せずにいた。しかしそうした先行きの見えない状況は、メンバーが1人減った小さなロックバンドにだけ言えることではなかった。東日本大震災を経験したこの国で、未来へのエネルギーを見つけるのは容易ではなかったのである。

できることといえば、ただシンプルに3人集まって演奏することしかなかった。なので、シンプルな曲をいくつか書き、当時懇意にしてくれた渋谷nobを営業時間外に格安で使用させてもらい、勢いのままに新しい曲を作り上げていった。後にミニアルバム「Goodbye Donuts(Hey, Statue Of Liberty」としてリリースされる楽曲達である。

中でも早めにアレンジが固まった「素敵な偽物」と言う曲を、3ピースとなったicon girl pistolsの新しいイメージとして映像化することを決定。MV監督は前回に引き続きマリナ・ナカガワである。

撮影は6月(だったと思う)の湘南エリアで行われた。マリナが描くどこかファンタジックなイメージは前作よりもスケールアップし、鮮やかなのにクールな、ロックなのにお伽話のような作品に仕上げてくれた。多分彼女は1番早くからicon girl pistolsの世界観にシンパシーを表明してくれていたんだと思う。意味より重要な無意味が世の中にはあって、冗談めいたことの方がシリアスさよりもパワーを持つ事があるというようなことを。

いくつかのシーンを撮り終えて最後に海辺の演奏シーンに取り掛かる頃には、既にかなり陽が傾いていた。そこから更に電飾の準備や、小道具、穴掘り(何のための穴かは映像を見て頂きたい)などに時間を要し、実際の演奏は2テイクくらいだったような気がする。夕日になると空の色が著しく変化するので、その少ないテイクさえも映像上うまく繋がらないことにその後マリナは苦労したようだが、結果的に様々な色味が交錯する感じが、オリジナリティを生み出しているように思う。

この曲も学生仲間や、外国人仲間がみんなで協力してくれたことで、なんとか1日のみの撮影で終えることができた。その時のアイツは今じゃ中々名の知れたバンドで活躍しているらしかったり、アイツとアイツはその後結婚することになったり。そんな風に書くとなんだか青春物語なのである。
ss

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素敵な偽物

野良猫みたいに茂みに 
寝転んで赤いシチューの夢を見てる

大体そんなとこだ 
もう勘弁しろよ 
アリバイはもう充分だろ

空き缶を寝床にして 
明日の事なんか当てにしてるのさ
煙草に火がつかないのは 
悪い知らせなのかもな

停泊中の船は大きすぎる 
湿っぽい四等室に潜り込んで
貴族の男達とポーカー勝負 
数字は1つも揃わないときてる
いつかはこんな奴でも 
荒んだ天使が 抱きしめるだろうか
俺はゲームからも船からも 
降りる事に決めたんだ

どうかこんな盗人の相手はもうしないで
どうか素敵な偽物に騙されて 
微笑んでくれないか

盗んだカサブランカを 
得意気に腕に巻いては上機嫌
野良猫は時計を見もせず 
しがみついて生きろと言う

どうかこんな盗人の相手はもうしないで
どうか素敵な偽物に騙されて
どうか毎日が素晴らしいわと言って
どうかガス灯のランプを指輪にして
微笑んでくれないか

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