MVで見るicon girl pistols10年史 No.8「モダンライフへようこそ」

8.モダンライフへようこそ - Welcome to Modern Life -

2014年にリリースした4曲入りE.P.「icon girl pistols E.P.」に収録の楽曲。80年代のファンク、しかもポストパンクを経由したようなものをicon girl pistolsでやるべく作った曲である。個人的にはAmbitious Loversに影響を受けていた部分もある。ダークで、猥雑で、ファンキーな音楽だ。

それを映像化するのにうってつけの人物が小野佑太朗だった。映像を学び、自身でも俳優として活動。インディ精神を前面に剝きだした映像監督である。彼はクリスと縁があり、そこからicon girl pistolsの「オニオンリング」という曲を彼の映像作品主題歌に使ってもらったりと、以前から少々関わりがあった。その後ふとしたキッカケから、その彼とタッグを組んで作品を作ってみようという話の流れになったのである。

こちらの楽曲は決まっていたのでそれを彼に聞いてもらった上で、最初に行われたミーティングで彼の構想を聞いた。すると彼は「メンバー全員殺されるMVを作りたい」とその目を光らせて語ったのである。そして最後には死人達とその他大勢を含めたダンスシーン、そこに向けて銃を乱射する金髪美女…なんともクレイジーな構想だ。タランティーノ世代であることは間違いないが、今思えばアレハンドロ・ホドロフスキーに繋がるようなイメージもある。シュールをキュビズムのように日常に二次元配置する感覚というか。シュールをシュールとして描かない、そういったことを彼はやりたいんじゃないかと勝手に想像したりする。

とにかくそんなterribleなアイディアを、彼なら実現してしまうんじゃないかという期待感をそのミーティングの場で抱かせてくれたのは事実だった。我々はそのアイディア全てに賛同し、演技もダンスも全てに協力する方向でMVを作成することにした。

撮影開始から発表までには実に丸1年を要したかと思う。満足のいく映像作品を作るのは、音楽以上にハードルの高いものだ。キャスティング、スケジュール、ロケーション、小道具、場合によっては諸々の許可、それから天候など。いくつもの条件をクリアしていかなければならない。特にインディペンデントでの制作では、妥協点との対話は避けられないものなのである。

完成した作品を見て、皆さんがどう思うか。判断は委ねようと思う。ただし、当初我々が思い描いていたものには正直言って届かなかったのは事実である。小野監督本人が一番悔しいだろうが、icon girl pistolsとしてもっと予算をかけさせてあげたり、スケジュールの都合をつけてあげたりできれば、より理想に近づけることはできたのだろうから、その責任は我々バンドにあるのだ。

理想としていた極上のエンターテインメント作品には届かなかったが、それでも非常にチャレンジングで面白い作品になっている。

ちなみに演奏シーンは某所に遠征して撮影したが、その日は朝からかなり大降りの雨。スケジュールが確保できている最後の日が大雨で潰れそうな事態になり、最早やけくそで撮影現場まで向かったところ、到着した夕刻には奇跡的にうっすら陽が出るくらいに回復。

湿り気を帯びた現場の空気と淀んだ天気が、曲の退廃感にはマッチしていて、最後に天候は味方してくれたんだかなんだか。

小野佑太朗とはいつかちゃんと準備して予算もかけて何か作りたいなぁ。明らかにぶっ壊れていて、あまりにそれが明らかなのでエンターテインメントになってしまうような日常を扱った何かを。それが、モダンライフなのかも知れないですね。ss


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モダンライフへようこそ

司会を務める二流の深夜番組に
あんたがやってきて
今日は何をお持ちになったんですかと尋ねられた

今日は私の子供を売りたいと思いますと
あんたが答えて
周りは相当に怒っちまったけど
俺は案外そうでもなかったぜ

命より大事なものを
金に変えたがってる奴はゴロゴロしてて
そいつらとなんの変わりもない

最近じゃそうやってみんな
衝撃的な見出しのついた
何か売りに出せるものはないかって探してる

俺はオリンピックを勝ち取った
この自分の脚を売りに出し
他に何か手放せるものはないかって
血眼になって探してる

そして残った身体中にいっぱいの装飾品をつけて
何一つ不自由なく暮らしていこうそれがモダンライフ

命より大事なものを
金に変えたがってる奴はゴロゴロしてて
そいつらとなんの変わりもない

ずっと雨が降り続いてる
荒廃した土地を買いたい
そう言ってるやつがいるんだ
そこでは何も育たないし
欲望も悲しみも生まれないって話だ
あんたのところで取り扱ってくれないか

きっとみんな幸せを
胸いっぱいに感じるだろう
モダンライフ

そして残った身体中にいっぱいの装飾品をつけて
何一つ不自由なく暮らしていこう
それがモダンライフ

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